ご挨拶

第9回ACT全国研修会 浜田大会にようこそ!

2017年1月に大宮ソニックシティでお会いしてから、1年と半年以上の日々が流れました。この間、ACT全国ネットワークでは、これからの僕たちの活動のありかたをめぐり、さまざまな対話を重ねてきました。そのなかで僕たちは、ACT(Assertive Community Treatment)の普及にとどまらず、多くの人々とつながって地域社会そのものと協働する地域精神医療の実現をめざす、そのような志を温めてきたように思います。

そしてその一里塚としての浜田大会。テーマは「地方の小さな町におけるアウトリーチ」です。いままで、多くの精神医療のサービスが大都市を中心にそのモデルを考えてきました。さまざまな情報が集まり、多くの人が集うところ、多額の財源が動くところとしての大都市には、先進的な精神医療が展開できる場所ではないかという幻想がありました。しかし現実は、これと異なります。歴史をみれば、精神病院は大都市の辺縁、人里離れたところに多量にたてられ、高度経済成長下において、大都市は総体として精神障害をもった人々を排斥するように機能してきたのです。近年、ようやく「入院中心から地域生活中心へ」(平成16年)のスローガンのもと、大都市でも地域中心の精神医療を興そうとする取り組みが注目され、僕たちもその一翼を担ってきました。しかし、人の顔が見える関係のあるコミュニティ(共同社会としての地域社会)が崩壊している大都市には多くの課題があり、真の意味での地域精神医療の実現には、まだ時間がかかりそうな状況です。

さて、「地方の小さな町」―ここには、どんな希望があるでしょうか。ここでも現実は厳しい姿ではありましょう。少子高齢化のなか、財源も乏しく、働き手の確保も難しいことでしょう。けれど、そのような状況だからこそ、高齢者にも、障害をもった人々にも、外国人やさまざまなマイノリティの人々にも、担うことのできる役割があり、大都市の閉塞した状況とは異なる世界が見いだせる、そのようなことはないでしょうか。偏見や差別はまだまだあるかもしれません。しかし、インターネットやSNSの発達は地方の小さな町を、軽々と世界につなげてもいます。新しい思想、発想が、地方の小さな町でうまれ、世界に発信でき、世界と交流できる可能性が広がっている、そのように思うことは楽観的に過ぎるでしょうか。

そして、僕たちのおはこのアウトリーチは、地方の小さな町でどのような意味を持つでしょう。担い手は、何に価値を求めることができるでしょうか。浜田大会では、対話の中で、このような問いについての模索も出来たらと考えます。さあ、多くの皆さんとお会いして、大いに語り合いましょう。お目にかかれることを楽しみにしております。

ACT全国ネットワーク代表幹事・大会長
伊藤順一郎