ACTの標準モデル 

標準モデルの趣旨

ACTチームの実践に際して求められる事項を、ACT標準モデルとして以下に示した。ACTは地域に根差した精神保健医療福祉システムであり、運営指針は当該ACTチームの所在地や運営形態などに応じて個別に取り決められるべきであるが、当モデルはその共通項を示したものである。

I. 理念

  • どんなに重い精神障害を抱える人であっても地域で暮らす権利を持つことを基本として、「リカバリー概念に基づいた支援」および「利用者のニーズを大切にする支援」であることを盛り込んだ理念を持ち、各チームはそれを明文化してオフィスやホームページなどに掲げる。

II. ACTとしての各種基準について

1. 施設と設備

  • オフィスは「病院」の建物内ではなく、原則として、地域社会の中にある。
  •  チームは、医療や福祉などの法人下にあっても、人事や財務への権限を含めて主体的に運営のできる独立した組織である。
  • チームはアウトリーチ活動を十分実践できるよう、スタッフ数にふさわしい、車両、携帯電話などの装置を持つ。

2. チーム基準

 スタッフ構成:超職種チーム

  • アウトリーチに専従する常勤職員が7-12名程度いる。
  • 各チームは医師以外のチームリーダーを置く。
  • 1人以上のチーム精神科医がいる。
  • 1人以上のプログラム・アシスタントを置くことが望ましい。
  • 100人以上の利用者対象のプログラムにつき、3人以上の常勤かつACT専従の看護師がいる。
  • 常勤かつACT専従の精神保健福祉士および作業療法士がいる。
  •  職業専門家、保健師、臨床心理士、物質依存の専門家など、利用者のニーズを満たすことに貢献できる技術を備えたスタッフがいることが望ましい。
  •  当事者のスタッフなど、ピアカウンセリングを通じて、当事者の体験や視点を共有できるスタッフがいることが望ましい。
  • これらの職種を同じスタッフによって維持し、欠員のない状況でチーム運営をする

 スタッフの役割

  • 各職種の専門性にとらわれすぎず、利用者を包括的に支援する。
  • チーム精神科医: 原則チームミーティングに参加して情報を共有する。また、利用者の処方、医学的アセスメントについて責任をもつ。チーム精神科医の他の業務との兼務は可とするが往診や危機対応などに柔軟に対応できる体制にあることが必要である。
  •  チームリーダー: チームの臨床面、運営面の両者に責任を持ち、管理業務だけを行うのではなく、50%以上の時間を利用者との関わりに費やす。また、週一回以上のスーパービジョン(ケース検討の形でのグループ・スーパービジョンを含む)を80%以上のスタッフに個別あるいはグループで実施する。
  • プログラム・アシスタント: プログラムが円滑に実施できるように、チームの管理・運営に関する具体的事務手続きや窓口業務を行い、必要に応じて利用者とスタッフ間の連絡・調整役を担う。

3. 対象者の加入基準

長期入院者や頻回入院者、長期のひきこもりなど地域社会で孤立状態にある重い精神障害を持つ人々にサービスが提供できるよう、各地域の実情に合わせ明確な加入基準を持つ。

(例:以下の条件をすべて満たすもの)

① 年齢 18歳から65歳まで。

② 疾患 統合失調症・双極性感情障害・重症うつ病を主診断としてもつ。

除外診断: 主診断が 発達障害・知的障害(IQ50以下)

③ 日常生活機能 独力では日常生活・安全管理・危機回避などや社会生活が営めない状態が6ヶ月以上続いている。

④ 精神科医療との関係が以下のいずれかを満たす。

  • 1年に2回以上の入院または年100日以上の入院
    • 地域や家庭でのトラブルがあり、地域生活の継続が困難な事例を含む。
  • 1年以上の長期入院者で心理社会的要件から退院が困難になっているもの
  • 家族等が通院中であるが本人は1年以上の長期のひきこもり
  • 地域で発症が疑われ、1年以上の長期にわたる未受診事例

⑤ GAF(機能の全体的評定尺度)では過去1年間継続して50点以下に該当

  •  安定したサービス環境を維持するために、チームは利用者の新規加入を低い率に抑える。

4. サービスの原則

  • アウトリーチを中心とした実践: 原則、利用者の生活の場に出向いてのサービスの提供を行う。
  • チームアプローチ: 利用者は複数のスタッフのサポートを受ける。
  • チームミーティングによる情報共有: 週4日以上。
  • スタッフと利用者比=ケースロード: 1対10以下。
  • ケアマネジメントの技法を用い、ケアプランに基づき、利用者のニーズや希望に即した包括的な支援をチームがタイムリーにおこなう。
    • 精神科薬物治療、危機介入(生活危機を含む)、カウンセリング、住居支援、スキルトレーニング、心理教育、家族支援、就労支援、物質乱用治療など
  • 入院時・入院中・退院時にも積極的に関与する。
    • 入院機関との緊密な連携の下、入院時にも利用者と関わる機会を得る。
  • 24時間365日対応(オンコール体制)を原則とする。
  • ニーズがある限り支援を継続する。
    • ACTへのニーズが解消された場合は、一般的な地域のサービスへステップダウンし、ACTを終了することができる。
    • 終了について、利用者とチームで合意を得るための一定のルールを持つ。
    • 終了した後も、ニーズが生じた場合、再加入できる一定のルールを持つ。
  • キャッチメント・エリア: 確実なアウトリーチ活動が出来るよう、明確なキャッチメント・エリアを持つ。(例:片道車で30分以内 )

5. サービスの特徴

  • 対面コンタクトは、原則として地域の中でおこなわれる。
  • 任意の粘り強いかかわりをおこなう。
  • 利用者の長所、能力、環境の長所などに注目し、利用者の“リカバリー”のプロセスを尊重した、ストレングスモデルによる関わりを実践する。
  • 必要に応じて高いサービス密度、頻度で関わる。
    • 週2時間以上、週4回以上の訪問など
    • 医療的な危機介入ばかりでなく、生活上の危機の支援にも積極的に取り組む
  • リカバリーのひとつの具体的ありかたを支援するものとして、就労支援を積極的に行う。
  •  同居の有無に関わらず、家族のリカバリーも尊重した家族支援を積極的に行う。
  • 家主、雇用主など、利用者の周囲の人々も支援の対象とする。
  • ニーズに応じ、アルコール乱用、薬物乱用、ホームレス支援などに特別のプログラムをもつことが望ましい。

III. スタッフ研修とモニタリング

職員の支援技術の向上を保障し、またチーム全体のサービスの質の向上に努めるため、チームは研修の機会やフィデリティ・スケールを用いたモニタリングの機会を確保し、3か月に1回以上のアウトカムモニタリングを実施して結果をスタッフ間で共有する。

IV. 地域社会の中での役割

  • 加入に当たって複数のルートを持つ。(例:救急治療病棟、保健所、市保健センター、地域活動支援センターなど)
  • 地域にACT加入のためのゲートキーピング機能をつくるよう積極的に働きかける。
  • 危機介入にあたって、チームも病棟への出入りができる、救急治療病棟、急性期治療病棟などとの、緊密な連携がある。
  • 入院中の利用者に対しても積極的に接触する機会を持って支援の継続を図る。
  • 事例検討会や地域連携の会議などを定期的に実施して、地域社会の中にネットワークを持つ。
  • ACT卒業時に、必要に応じて利用者を紹介できる支援機関との連携がある。
  • 地域生活中心の精神保健医療福祉システム作りに積極的に貢献する姿勢を持つ。

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