一般社団法人 コミュニティ メンタルヘルス アウトリーチ協会について

法人設立準備委員会
代表 梁田英麿(S-ACT)

 僕らはいまCOVID-19 に憂いている。未知の感染症がもたらす脅威は計りしれず、世界中を不安に駆りたて、人とひととの連帯感や信頼感をも破壊しようとしている。

でも僕らは、この苦難を乗りこえたときに訪れるHappy を固く信じて、少しでも早くに「一般社団法人 コミュニティ メンタルヘルス アウトリーチ協会」(通称:アウトリーチネット)を立ちあげられるように、その準備を急ぐことを決めた。

アウトリーチネットは、「アウトリーチを通じて、メンタルヘルスの支援ニーズがある人を中心に、社会的孤立状態にある人や、そのリスクがある人、また、その人に関わる人たちが、地域の中で自分らしい暮らしができる社会を実現する」組織である。この目的を達成するために、僕らが最初に考えた部会は次の通りである。組織図をご覧いただきたい。

 

まず「訪問支援・訪問看護部会」については、業種や職種にとらわれることなく、アウトリーチを実践しておられる福祉分野の方々や訪問看護ステーションの方々などを中心に、広くおおくの皆さんにご加入いただきたい部会となっている。

また、医療の現場では、診療所ならではの苦渋もあれば病院ならではの懊悩があるのかもしれないことを想定し、それぞれが同じテーブルを囲んでアウトリーチについての議論がしっかりとできるよう、「訪問医療部会」には診療所型と病院型の二枠を設けた。

これらに加えて、「子ども・若者支援部会」では、子どもや若者、貧困状態の孤立世帯やホームレス、出所者などを対象に、子ども・若者育成支援推進法や生活困窮者自立支援法のもとでアウトリーチを繰りひろげられている方々と協働しながら、メンタルヘルスのノウハウも共有しつつ、重層的かつ横断的な支援システムの構築を目指している。

さらに、アウトリーチの実践活動に限らず、コミュニティケアのための地域全体の問題解決能力が向上していくことにも軸足をおいているため「地域づくり部会」も設けた。当事者だけを対象とするのではなく、その人を取りまく環境も含めた地域全体を視野に入れ、地域の皆さんとともにそれぞれの立場は違えども社会的包摂の実現を考えていく必要があるからである。

そして、「ACT 部会」では、フィデリティ調査の実施やACT の普及など、これまでのACT全国ネットワークの活動を継続する形となる(アウトリーチネットが立ち上がるまでの情報については、引き続きACT 全国ネットワークのホームページでご確認いただきたい)。

ひるがえって、アウトリーチネットが支援対象とする人たちにかかわる国際的なデータをならべてみると、日本の「メンタルヘルスの支援ニーズがある人」については、有病率は欧州と同程度だが、世界の中では受診率がかなり低く、自殺率がきわめて高いことがわかる。「社会的孤立状態にある人」のデータでは、家族以外との付きあいがほとんどない状態にある人の割合が先進国20 ヶ国の中で日本がもっとも高く、孤独死の増加も目立つ。子どもたちの環境に目を向けてみても、10〜14 歳の死因第2 位、15〜19 歳の死因第1 位が自殺となっていることが象徴と思われるが、日本の家庭における虐待や貧困、学校における不登校やいじめが深刻な状況にあることがみえてくる。

じつは、専門職から支援を受けたことがきっかけとなり、世の中の「正しさ」に傷つき、社会的孤立状態になった人の数はけっして少なくはない。メンタルヘルスの分野では、とくに医療従事者と出会ったことによる傷つき体験がもとで、人と繋がることや支援を受けることに後ろむきになってしまっている人たちがいる。

このような立場におられる人たちにとっての一番の苦しみは、もしかすると、自らの苦悩や生きづらさを理解してもらえないことにあるのではないだろうか?人とひととの間に生じるこうした「壁」の傍らで、僕らにできることはあるのだろうか?

Karl Jaspers は「どうしたらその壁を乗りこえられるのか?」「相手を了解できるようになるためには何が必要なのか?」という試みを繰りかえす中で、いわゆる「了解 verstehen」とは「一緒に体験をかさねること」との見識にいたっている。かの偉人は、目の前の人の話を聞きながら必死に感情移入し、その人と一緒に体験をするような関係を作っていくことが「了解」につながるという。

僕らもその人の「身になる」ためには、「常識」といわれているものも、専門職としての技術も、みずからの自我ですら一度は手放してみたほうが良いのかもしれない…その上で、目の前の人の小さな声を大切にし、その人の文脈に寄り添ってみると、確かに僕らの日常でも、当事者の方々の主観が必ずしも「おかしなこと」ではないんだと了解できることが増えてくる。

つまるところ、「壁」に背を向け「あちら側」と「こちら側」のままに留まるのではなく、アウトリーチを通じて安全な場所と安心できる支援をお届けし、当事者と一緒に体験をかさねあわせながらその「壁」を取りのぞき、そして地域の皆さんとともに「あっちもこっちもない」共同体づくりにいそしむことが、アウトリーチネットに「できること」なのだ。

僕らは、「弱い」といわれているものにも大きな価値があると思っている。「強い」とは、その「弱い」ものをやさしく守れることでもある。いわずもがなのことではあるが、COVID-19 の渦中にあって、社会的孤立状態におられる人たちにこそ、きちんと手が差しのべられることを僕らは切に願っている。

資料のダウンロード

設立のお知らせ チラシ